「大腸劣化」の悪影響

冬の寒さが引き起こす
負のスパイラルに要注意!!

松井 輝明

「巣ごもり便秘」になっていませんか?今、気をつけるべき「便秘」とその理由

初詣や帰省など人が集まる場所に行く人は増える?

20代から50代の男女1,600名に「年末年始の行動に関する調査」を実施したところ、『今年の年末年始(2021年12月末~2022年1月初め)にやろうと考えていることを教えてください』という質問では、4人に3人は何らかの外出をするという結果がでています。「買い物に行く」が27.4%で最も多く、続いて「初詣」が26.8%でした。「外食」は23.3%、「帰省」は19.8%、と続く結果になり、年末年始に人が集まる場所へ外出をする方は多くなりそうです。一方で、「すべて我慢する」という方も25.9%おり、外出自粛などの行動制限が解除されたいまも(2021年12月時点)慎重な行動を心掛けている人もいることが分かりました。

今年の年末年始(2021年12月末~2022年1月初め)にやろうと考えていることを教えてください。
便秘の有訴者率

出典:「大腸劣化」対策委員会調べ

冬の寒さから来る「運動不足」、「水分不足」、「乾燥」に要注意!

『この冬に心がけたいことを教えてください』という質問では、「マスクをする(61.6%)」、「手洗い(57.4%)」、「うがい(42.8%)」と回答する人が多く、コロナ禍で行っていた対策をこの冬も継続しようと考えている方が多いようです。一方で、「乾燥を防ぐ(36.9%)」、「水分をとる(36.1%)」、「運動をする(27.6%)」と回答した人はマスクや手洗いと回答した人と比べると多くありません。しかし、そもそも冬は健康リスクが高くなる季節なので、マスク、手洗いなどを心掛けたうえで、「運動不足」、「水分不足」、「乾燥」にも注意が必要です。

この冬に心がけたいことを教えてください。
便秘の有訴者率

出典:「大腸劣化」対策委員会調べ

【運動不足】
冬期は寒さで運動量が少なくなります。運動量が減少すると、「肥満」や「便秘」になる可能性は高くなります。行動制限が解除されても、外出自粛によって起きていた「コロナ太り」や「巣ごもり便秘」などと同じ症状が冬の寒さによって起こります。これまでの巣ごもり生活で大腸や便の不調を感じた経験のある方はより一層、気をつけなければなりません。

【水分不足】
一般的にヒトは1日に約1,000ml~1200mlの水分を飲料水から摂る必要があると言われています。夏の暑い時期に比べ、冬は水分を摂る意識が低く、水分量が不足しがちです。そのため、便が固くなり「便秘」になるリスクが高くなります。

【乾燥】
冬は空気が乾燥しているため、口や喉のなかの粘液も乾燥しやすくなります。すると粘膜で作用して、ウイルスや毒素などの異物を排除してくれるIgA抗体がどんどん少なくなり、「免疫力」が低下して、風邪やインフルエンザなどいろいろな病気にかかりやすくなってしまいます。

このような冬の寒さが原因となる、行動や環境の変化が「免疫力低下」「便秘」「肥満」や「高血圧」などの健康リスクを高めてしまうのです。

「免疫力低下」、「便秘」、「肥満」の
3大健康リスクは大病につながる危険信号!

「免疫力低下」は怖いけれど、「便秘」や「肥満」くらいなら・・・と考える方がいるかもしれませんが、決してそうではありません。「免疫力低下」「便秘」「肥満」はすべてがお互いに関係しているスパイラルの関係と言えるのです。

便秘の有訴者率

大腸ではビフィズス菌などの善玉菌がエサを発酵させてつくり出す「短鎖脂肪酸」によって、腸壁の内側にあるムチンという粘液が増やされバリアを張り、有害菌が入らないようにブロックする役割をはたしています。便秘が続いて腸内環境が悪くなると、このバリアが弱まるため、「便秘」が引き金となって「免疫力低下」が起きます。逆に「免疫力低下」によって「便秘」になってしまうこともあります。免疫力が落ちると解毒作用や毒素排泄が妨げられて腸の正常な運動が妨げられてしまうことから「便秘」になってしまうことがあるのです。

また「便秘」が原因で「肥満」になってしまうこともあります。便とは摂取した飲食物が胃や小腸で吸収された後の残りカスなので、そのなかには吸収されなかった脂肪分や糖分なども含まれています。便が便秘で排出されずに腸内に留まってしまうと、水分と一緒に体内へ再吸収され、脂肪として蓄えられしまうため、便秘になると食べ物の消化吸収にも影響がでます。便秘で直腸の出口に食物残渣が滞ってしまうため、消化管の運動が妨げられます。通常、小腸での栄養吸収部位では5~6時間で通過するところが、7~8時間かかり、そのため余分に栄養の吸収が起こり「肥満」になると考えられています。

また「肥満」によって免疫機能の調節をするサイトカインという生理活性物質のバランスが崩れて、免疫機能が不調になったという研究なども報告されています。※1「肥満」の人は脂肪やタンパク質が多く食物繊維の少ない食事をしているケースが多く、「肥満」の人の腸内細菌の特徴として「短鎖脂肪酸」を産生する善玉の腸内細菌が少なくなってしまいます。そのため腸を動かすエネルギーが減少してしまい、「便秘」になりやすくなります。

「便秘」が肥満や免疫力低下につながることも、「肥満」が免疫力の低下や便秘の誘因となることも、「免疫力低下」によって便秘や肥満になってしまうこともあり得るのです。まさに負のスパイラルと言えるのです。「免疫力低下」、「便秘」、「肥満」の症状は「大腸劣化」の分かりやすいサインでもあります。放っておくと糖尿病などの代謝系のトラブルやうつ、記憶など神経・脳関連のトラブル、大腸がんを発症する可能性も考えられます。

※1 出典:日本栄養・食糧学会誌(0287-3516)59巻1号 Page7-14(2006.02)

冬の3大健康リスク「免疫力低下」、「便秘」、「肥満」の
スパイラルを根本から防ぐ方法とは!?

「免疫力低下」、「便秘」、「肥満」はそれぞれが引き金となりえるスパイラル関係にありますが、根本から防ぐことが可能です。その鍵を握るのがビフィズス菌が大腸でつくり出す「短鎖脂肪酸」です。

善玉菌の「エサ」水溶性食物繊維、オリゴ糖など→ビフィズス菌は、
エサを食べて、短鎖脂肪酸を産出!→短鎖脂肪酸

「短鎖脂肪酸」の役割は、腸内を弱酸性に保って悪玉菌の活動を抑制したり、大腸のぜん動運動を促進して便通を良好にしたり、殺菌・抗炎症作用とともに腸のバリア機能を高めたり、腸管の粘液の分泌や水分・ナトリウムなどの吸収を促したりと、多岐に渡ります。普段からビフィズス菌や酪酸菌などの有益な菌をおなかの中に増やし、大腸内で「短鎖脂肪酸」が活躍できる環境を整えておくことで、「免疫力低下」、「便秘」を防ぐことにつながります。

「短鎖脂肪酸」の効果はそれだけではありません。ビフィズス菌や水溶性食物繊維を摂取することで「肥満」の抑制に効果があることが試験で分かっています。これは、大腸にすむビフィズス菌など特定の善玉菌が、水溶性食物繊維をエサとして「短鎖脂肪酸」が産生するためと考えられています。「短鎖脂肪酸」は脂肪細胞に働きかけて脂肪の蓄積を防ぎ代謝を上げて、やせやすい体質へ導く働きも担っているのです。

【ビフィズス菌や水溶性食物繊維の摂取による肥満抑制効果】
ヒトの肥満度を表す指標であるBMI(Body Mass Index)が高めの男女52名(BMI24~30)が、ビフィズス菌を12週間摂取したところ、体脂肪量・体重ともに12週目には摂取前と比較して、有意な減少が認められたという試験結果が報告されています【図1】※2また、食物繊維を豊富に含むスーパー大麦の摂取による抗肥満効果についての評価試験では、肥満傾向の成人男女50名が、スーパー大麦含有食品(グラノーラ形体で、スーパー大麦の摂取量として12 g/dayに設計)を12週間摂取したところ、腹部内臓脂肪面積(VFA)の有意な減少が確認されています。※3

ビフィズス菌を12週間摂取した体脂肪量・体重の比較グラフ

※2 出典:Bioscience of Microbiota, Food and Health 37(3): 67-75(2018)
※3 出典:薬理と治療 Volume 46, Issue 12, 2099 - 2110 (2018)

大腸内でビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌が不足すると短鎖脂肪酸がつくられなくなってしまいます。まずは腸内細菌叢を「短鎖脂肪酸」を産生しやすい理想的なバランスになるようにビフィズス菌などの善玉菌を増やすことを心掛けましょう。腸内環境を良くすることは、冬の3大健康リスク「免疫力低下」、「便秘」、「肥満」のスパイラルの根本を断つことにつながるのです。

【ビフィズス菌は“ビフィズス菌入りのヨーグルト”で補給】
ビフィズス菌を手軽に摂るには“ビフィズス菌入りのヨーグルト”がおすすめです。ビフィズス菌は酸素を嫌う特性から、一部のヨーグルトやサプリメントにしか含まれていません。すべてのヨーグルトに含まれるわけではないため、スーパーやコンビニでビフィズス菌入りヨーグルトを選ぶときはよく確認して選ぶようにしましょう。

普通(乳酸菌のみ)のヨーグルトとビフィズス菌入りヨーグルト摂取による整腸作用の違い
普通(乳酸菌のみ)のヨーグルトとビフィズス菌入りヨーグルト摂取による整腸作用の違いのグラフ

出典:Yaeshima et al,Biosci Microflora,1997

普通(乳酸菌のみ)のヨーグルトとビフィズス菌入りヨーグルトイメージイラスト

【冬の基本的な健康対策でさらにリスク軽減】
腸内環境を良好な状態にすることも重要ですが、冬の基本的な対策として、体を温める、乾燥を防ぐ、水分を摂る、適度に運動することを意識しましょう。ヒトは寒さを感じると交感神経の働きにより体温を逃がさないように血管が収縮して血圧が高くなり、血流も滞ってしまい、その影響で腸の働きが悪くなり「便秘」になります。体を温めると腸の動きが良くなって免疫力も活性化しますので、日頃の食生活から温かいものを食べるようにしましょう。また、寒いと暖房を使いがちです。窓をしめきってしまうので乾燥対策が難しくなりますが、加湿器などを上手に活用して、室温が20℃、湿度が50%~60%になるように工夫しましょう。そうすることで粘膜の免疫力が高まります。水分は飲料水から1日に約1,000mlは摂るように心がけましょう。そして、室内でできるストレッチのような運動で構いませんので毎日行うことで、さらに健康リスクの軽減につながります。

その他の記事を読む

「免疫力を高めるなら、大腸から」のわけ

「免疫力を高めるなら、大腸から」のわけ

松井 輝明

私たちの体には「免疫」という防御システムがあり、有害なウイルスや毒素が体に侵入してきても病気にならないよう撃退する力が備わっています。

「巣ごもり便秘」になっていませんか?今、気をつけるべき「便秘」とその理由

「巣ごもり便秘」になっていませんか?今、気をつけるべき「便秘」とその理由

松井 輝明

ほんの10年ほど前まで、「便秘」は病気とは考えられていませんでした。生死に直接関わらないため長らく軽視され続けていたのですが、2017年に日本で初めて「慢性便秘症診療ガイドライン」が発表され、便秘の定義や種類がようやく明確になったのです。

便秘の人は、一生懸命がんばっても“空回り”!?

便秘の人は、一生懸命がんばっても“空回り”!?

便秘は現代人にとってあまりにも身近な症状であるため、個人の体質・体調の問題として片付けられがちです。しかし便秘を放置し、しっかりとした予防・改善の取り組みがなされなければ、やがて「生活の質」や「仕事の生産性」にまで悪影響がおよぶかもしれません。

「体臭」と大腸の意外な関係

「体臭」と大腸の意外な関係

気温が上がり汗の量も増える春先から夏にかけては、「体臭」への意識が高まる時期でもあります。特にここ数年は「スメハラ」という言葉も登場し、社会問題にもなっています。体臭の原因はいくつかありますが、心理的なストレスも大きく関係していることをご存知ですか?

「うつ」や「肥満」と腸の深い関係

「うつ」や「肥満」と腸の深い関係

生活環境が大きく変化し、さまざまなストレスを感じる人が増えています。そうしたメンタルの健康リスクを予防する手段の一つとして近年研究が進んでいるのが、「脳腸相関」と呼ばれる脳と腸との密接な関係です。