「大腸劣化」の悪影響

「体臭」と大腸の意外な関係

「体臭」と大腸の意外な関係

心理的ストレスも体臭の一因に

気温が上がり汗の量も増える春先から夏にかけては、「体臭」への意識が高まる時期でもあります。特にここ数年は「スメハラ」という言葉も登場し、社会問題にもなっています。体臭の原因はいくつかありますが、心理的なストレスも大きく関係していることをご存知ですか?

体臭には大きく「表面反応由来」「皮脂腺由来」「血液由来」の3種類があります。「表面反応由来」は、皮膚表面の常在菌などの作用によるもので、汗臭やミドル脂臭、加齢臭などがその代表です。「皮脂腺由来」は、皮脂腺からの分泌物(酢酸など)から発生する体臭で、主にすっぱいニオイを発します。最後の「血液由来」は、血中を流れているニオイの成分が揮発して体臭となるもので、“ダイエット臭”として有名なアセトンやアンモニアが主成分の疲労臭などがあります。

体臭の原因と種類の違い
体臭の原因と種類の違い

出典:関根、臨床環境医学(2016)

洗っても洗っても落としきれない「疲労臭」

3種類の体臭の中で特に気つけたいのは、「血液由来」のものです。なかでも特に注意したいのが、アンモニアが主成分となっている疲労臭。たんぱく質に偏った食生活や筋肉疲労、心理的ストレスなどによって発生するため、現代人の生活において発生しやすい体臭と考えられています。 皮膚の表面で起こる他の2つの体臭は、こまめに汗を拭いたり殺菌作用のあるシャンプーやボディソープを使ったりすることで対策が可能です。しかし、血液由来の体臭は、血中を流れているニオイの成分が揮発することで体臭となるため、皮膚表面を洗い流すだけでは根本的な解決にはなりません。「血液由来」である疲労臭を解決するには、体の内側をキレイにする必要があるのです。

腸内細菌と疲労臭のフシギな関係

疲労臭の発生メカニズムを見ると、腸内細菌が深くかかわっていることが分かりました。そこで、腸内細菌の変化と疲労臭との関係性を検証する実験を行いました。実験の内容は、健常な男女にラクチュロース(ビフィズス菌など善玉菌のエサとなるオリゴ糖で、牛乳に含まれる乳糖を原料とした成分)を2週間毎日摂取してもらい、大腸内のビフィズス菌数と疲労臭(皮膚アンモニア放散量)の変化を測定するものです。

その結果、ラクチュロースを摂取する前と後で大腸内のビフィズス菌数が有意に増加しただけではなく、それに伴って疲労臭(皮膚アンモニア放散量)も有意に減少しました。つまり、大腸をケアすることで洗っても落とすことのできない疲労臭を対策することができたのです。

この大腸内の環境改善と疲労臭の軽減の関係から、ビフィズス菌が産生する短鎖脂肪酸がアンモニアを産生する腸内細菌(悪玉菌)に何かしらの働きかけをしたと考えられました。

大腸内で短鎖脂肪酸を増やすにはビフィズス菌とともに、海藻類、豆類などに多く含まれる水溶性食物繊維やミルクオリゴ糖を摂るのが効果的です。

大腸ケアで誰でも
“若い女性の香り”になれる!?

ビフィズス菌数と疲労臭放散に関する実験の際に、他の体臭成分で増減するものがないか確認したところラクトン(C10/C11)という成分が増加していることが分かりました。ラクトンとは「桃のような香り」と表現される甘い香りで、若い女性に特徴的な香りと言われています。赤ちゃんのいい香りもラクトンによるものとも言われています。

ここでラクトンとビフィズス菌の関係についてのユニークな調査をご紹介します。
淡路島にある「のじまスコーラ」という施設にある「のじま動物園」には、「ラアルくん」というアルパカがいます。ラアルくんは若い女性にだけチューをすることで有名になりました。ラアルくんは、若い女性に特徴的な香りであるラクトンに反応してチューをしていると言われており、実際にラクトンを体に塗布すると、男性でもチューをしてくれるのです。そこで、ラアルくんにこの芸を教えた飼育員さん2名のラクトン放散量と大腸内のビフィズス菌数を測定したところ、先の実験の平均値と同じか平均よりも上回っており、ラクトンの放散量も多いことがわかりました。ビフィズス菌とラクトン拡散量の因果関係まではまだ明確になっていませんが、ラアルくんはそのような傾向を持った人を嗅ぎ分けているのかもしれません。

少し話は逸れましたが、色々と対策をしているのに体臭が気になるという人は、大腸劣化を疑ってみましょう。 ビフィズス菌入りのヨーグルトや水溶性食物繊維の摂取など、体内のビフィズス菌を増やす方法はたくさんあります。大腸ケアでビフィズス菌を増やせば、誰でもラアルくんにチューしてもらえる素敵な香りが手に入るかもしれません。

アルパカのラアルくんと飼育員さん
アルパカのラアルくんと飼育員さん
ラクトン(C10、C11)とビフィズス菌の相関グラフ
ラクトン(C10、C11)とビフィズス菌の相関グラフ

関根ら、室内環境学会(2019)

監修:
関根 嘉香(東海大学理学部化学科 教授)

プロフィール:東京都立駒場高等学校卒業後、慶應義塾大学理工学部応用化学科に進学、環境化学(橋本芳一研究室)を学ぶ。1991年慶應義塾大学大学院理学研究科を修了後、日立化成工業株式会社に入社、筑波開発研究所に勤務。1993年東海大学理学研究科にて理学博士号取得。ヒト皮膚から発生するガス成分を測定し、健康状態との関連を研究。またこのガス成分を用いた個人認証技術の研究も開始。

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