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「巣ごもり便秘」になっていませんか?
今、気をつけるべき
「便秘」とその理由
松井 輝明
「便秘の定義」と新たなキーワード「巣ごもり便秘」
ほんの10年ほど前まで、「便秘」は病気とは考えられていませんでした。生死に直接関わらないため長らく軽視され続けていたのですが、2017年に日本で初めて「慢性便秘症診療ガイドライン」が発表され、便秘の定義や種類がようやく明確になったのです。
そのガイドラインによると、便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」。つまり、たとえ1日に3~4回排便があったとしても、残便感があればそれは便秘とみなされます。
便秘の種類は、その原因によりいくつかに分かれますが、最近にわかに注目されはじめたのが「巣ごもり便秘」です。外出自粛の長期化でなかなか家から出られない「巣ごもり」状態が続けば、運動不足やストレスにより大腸内に有害菌が増え、これまで便秘とは無縁だった人も便秘になってしまう可能性があります。便秘対策は、今やすべての人が取り組むべき課題になりました。
女性と高齢者に便秘が多いワケ
現在、日本国内では潜在患者を含めると約2千万人もの人が便秘に悩んでいると言われています。厚生労働省の国民生活基礎調査(2016年)によると、便秘を自覚している人の割合は、男性で約40人に1人、女性は約20人に1人で、女性の方が男性の2倍近く便秘に悩んでいるのだそうです。
思春期以降の女性に便秘が増えるのは、女性ホルモンと関係があります。月経周期にともなって大きく変化しており、排卵直後は黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で便秘がちになり、月経から排卵までは卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響で便通がよくなるのです。黄体ホルモンは受精した際、流産にならないように大腸のぜん動運動を抑える作用があります。そのため、黄体ホルモンの分泌が活発になる排卵~月経までの期間になると、便秘しやすくなってしまうのです。
一方、高齢になると男女ともに便秘で悩む人が多くなります。60代からは男性も便秘を自覚する人が急増し、80代を超えると男女の差はほとんどありません。これは、若い時よりも食事量や運動量が減り、筋力低下により腸の働きも衰えるためです。また、高齢になるほど腸内の善玉菌であるビフィズス菌が減少することも、便秘や免疫が低下する要因の1つです。
便秘の有訴者率
出典:厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成28年)
女性の月経周期と便秘
便秘が引き起こす弊害とその対策
便秘は他の病気と比べて多くの人が体験するため危機意識が薄く軽視されがちです。しかし、体内に毒素が溜まっている証拠で「大腸劣化」しているサインでもあるため、全身のトラブルにつながる前に対処することが大切です。
便秘を放置したままにしていると、肌あれや集中力、免疫力の低下、がんなど、全身にさまざまな悪影響が出るようになり、やがて深刻な病気を引き起こします。
外出自粛のストレスや生活リズムの乱れからくる「巣ごもり便秘」でお悩みの方はもちろん、高齢の方や長年便秘で悩んでいる方も、手遅れということはありません。なぜなら腸内環境は2週間で改善できるからです。ヨーグルトや漬物、納豆などの発酵食品を上手に取り入れましょう。ヨーグルトや発酵食品に含まれる善玉菌は、そのほとんどが定着せず便と一緒に体外へ排泄されてしまうため、継続的に摂り続けることがポイントです。また、大腸にすむビフィズス菌などの善玉菌がエサとして好む水溶性食物繊維・オリゴ糖・ラクチュロースなどを積極的に摂るとより効果的です。腸内フローラは一人ひとり異なりますから、同じ菌種を2週間続けて摂取し、便通や便の色・ニオイなどの変化を観察しながら、まずは自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。
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