若さ維持のために
「腸活」をしている人は、
見た目も体も若い!?

昨今の研究において、老化の速度(PoA:ペース・オブ・エイジング)は人によって差があることが分かってきており、専門家の間で注目を集めていますが、2022年の老化因子に関する研究※1発表において、「腸内細菌の乱れ」が新たに老化因子の一つに追加され、腸内環境の悪化による健康への影響は、老化にも及んでいると考えられるようになってきました。
そこで当委員会でも、全国の20~70代の男女3,600名を対象に、「老いと若さに対する意識調査」を実施したところ、生活者の老化への意識や、若さを維持するために「腸活」をしている人の実態が浮き彫りになりました。この結果について、日本抗加齢医学会理事長である山田秀和先生に、最新の老化研究も踏まえて解説いただきました。
[調査概要]
■表 題 : 老いと若さに対する意識調査
■調査主体:「大腸劣化」対策委員会
■調査期間 : 2025年2月8日(土)~2月9日(日)
■調査方法 : インターネット調査
■調査対象 : 全国20代~70代 男女3,600名
1.過半数の人が若さを維持したい・若返りたいと思っている
自分の「若さ」についてどう考えているかを質問したところ、「今の若さを維持したい(36.8%)」、「今より若返りたい(22.3%)」と、約6割もの人が若々しくいたいと思っていることが分かりました。

2.多くの人が、人によって老化速度に差があると感じている
老化の速度は人によって差があると思うか、との質問には、「とてもそう思う(38.7%)」、「ややそう思う(47.6%)」に回答が集中し、約9割もの人が、人によって老化速度に差があることを感じていました。

3. 実年齢よりも若く見られる人は、体も若いと感じている
“実年齢よりも若く見られる人”(n=1,732)の特徴を調べたところ、約9割もの人が、自分の体(体力、身体機能など)が実年齢に対して若いと感じると回答しており、見た目と体の若さには関係があることが示唆されました。

4. 老化速度を速めると思う要因は、
運動不足、ストレス、食生活や腸内環境の乱れ
老化の速度がどんな要因で速まると思うか、との質問には、「運動不足(66.4%)」、「ストレス(59.4%)」を選択する人が多いと分かりました。また、「不規則な食事(46.4%)」、「栄養の偏り(40.3%)」といった食生活の乱れを選択する人も多く、なんと33.2%の人が「腸内環境の乱れ」を選択。3人に1人が、老化と腸内環境には関係があると思っていることが分かりました。

5. 若さ維持のために“腸活をしている人”は、
実年齢よりも若く見られ、体も若いと感じている
若さ維持のために“腸活をしている人”(n=430)の特徴を調べたところ、62.8%の人が「実年齢よりも若く見られる」と回答しており、“何もしていない人”と比べると約1.7倍も多いことが分かりました。
同様に、“腸活をしている人”のうち「自分の体が実年齢よりも若いと感じる」と回答した人は、“何もしていない人”と比べると約3倍も多く、「腸内環境の乱れ」が老化速度に影響している可能性が示唆されました。

<山田秀和先生によるコメント>
人によって差がある老化速度
(PoA:ペース・オブ・エイジング)
老化研究の中で新たな潮流として注目されているのが、老化速度(PoA:ペース・オブ・エイジング)です。実年齢とは違い、体の細胞や組織の状態に基づいて判断される年齢を生物学的年齢といい、体の健康状態や老化の進行具合、加齢による疾患のリスクで決まります。老化速度とは生物学的年齢が進む速さのことで、この老化速度の理解を深め、いつまでも若々しく、心身共に健康な状態を保つための研究が盛んに行われています。その中の一つである「ダニーデン研究※2」によると、26歳から45歳までの20年間で、老化が1年に0.4歳しか進まない人と、2.44歳も進む人がいることが明らかになっており、多くの人が感じているように、人によって老化速度には差があることが証明されています。老化速度を遅らせ、健康寿命の延伸を目指した考え方がアンチエイジングであり、将来的には“リジュビネーション”(若返り)にまで進歩すると考えています。
見た目が若い人は体も若い?
デンマークで行われた研究※3では、「見た目」と寿命の関係が明らかにされています。研究に参加した双子の写真を41人の男女に見てもらい、何歳に見えるかを判定してもらったところ、双子のうち「老け見え」している人の方が先に亡くなり、「若見え」している人の方が長生きしていることが分かりました。このことから、見た目は老化速度を知らせてくれる重要なメッセージであるといえます。見た目が若く見られる人は、体も若いと感じている人が多いという今回の調査結果も、偶然ではないと考えられます。
老化速度を決める要因の約7割は生活習慣
人によって老化速度に差が出るのはなぜでしょうか。先に紹介した研究の双子は、同じ遺伝的背景を持っているにも関わらず、寿命に差がありました。これは、老化速度には遺伝的要因よりも、生活習慣などの環境要因の方が影響していることを示しています。実は、老化速度は遺伝による影響が約3割、生活習慣を含めた環境による影響が約7割なのです。そのため、運動などの生活習慣を半年程度改善するだけでも変化があるといわれています。
老化速度を遅くするには、運動、栄養、精神(脳、睡眠含む)、環境(腸内環境・住宅環境・人間関係)の4つを適切な状態にすることが大切です。
老化速度と腸内環境は深く結びついている
2022年に発表された研究※1で老化因子の一つに「腸内細菌の乱れ」が追加され、老化速度と腸内環境の関係は注目を集めています。老化速度において腸内環境は重要で、全身の炎症や免疫機能、代謝に影響することで、老化の進行にも関与していると考えられます。まずはバランスの良い食事を心がけましょう。具体的には、食物繊維を含む野菜・豆類・全粒穀物、発酵食品の納豆・ぬか漬け・味噌、ヨーグルトなら善玉菌の代表格であるビフィズス菌入りのものなどを取り入れることが重要です。健康寿命を伸ばすためにも、若いうちから老化速度を意識した食習慣を継続することがとても大切です。
※1 Aging (Albany NY).2022 Aug 29;14(16):6829-6839.
※2 Nat Aging. 2021 March ; 1(3) : 295-308.
※3 BMJ. 2009 December ; 339 : b5262.
監修:山田 秀和
(日本抗加齢医学会理事長)
プロフィール:1981年近畿大学医学部卒業。専門は皮膚科学(免疫・アレルギー疾患)、抗加齢医学。オーストリア政府給費生としてウイーン大学や米国国立衛生研究所で学ぶ。2007年に近畿大学アンチエイジングセンターを創設し、医学、薬学、農学、運動に関する共同研究を行っている。現在は「見た目」の研究から、遺伝子の働きを制御するエピジェネティクスの仕組みの究明に取り組み、日本人のEpigenetic Clockの開発もしている。2025年大阪・関西万博の大阪パビリオン推進委員会委員・ヘルスケア先端予防医療ディレクターも務める。
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