食物繊維とビフィズス菌がつなぐ
“菌のリレー”

腸活に役立つ“食物繊維”
でも摂取量は全然足りていない
今やだれもが知ることになった腸活。そして、ヨーグルトと並んで腸活に取り入れたいのが“食物繊維”です。食物繊維はエネルギーや栄養になることなく大腸まで運ばれる成分で、長年便のかさ増し程度の存在と考えられていました。しかし研究が進み、腸内細菌のエサとなり菌を増やす・活性化するなど、重要な役割が明らかになってきました。さらに、1日25~29gの摂取で肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病リスクを下げるという研究が数多く報告されています。WHOや厚生労働省でも、理想的な摂取量を成人で25g以上※2としています。しかし、実際にはほぼ全世代にわたりその半分以下しか摂取できていません。
この現状を補うための摂り方のコツがわかってきました。ポイントを押さえれば、食物繊維の嬉しい健康効果がより期待できます。

出典
※1 平成30・令和元年国民健康・栄養調査
※2 厚生労働省「日本人の食事摂取基準2025」
食物繊維の摂り方に
2つのコツがあった!
① 腸内で発酵しやすい食物繊維を選ぶ
腸内細菌が十分にチカラを発揮できるように、有用菌のエサになる発酵性が高く、短鎖脂肪酸になりやすい食物繊維を選んで摂りましょう。多く含まれるのは、リンゴやキウイフルーツ、ゴボウや玉ねぎ、ワカメ、穀類やいも類などです。また、冷えたご飯やいも類には、食物繊維の一種であるレジスタントスターチが多く含まれます。

短鎖脂肪酸の産生に必須!発酵性食物繊維
食物繊維の中でも、腸内細菌のエサになるのが発酵性食物繊維です。エサになって発酵することで、全身の健康に寄与する短鎖脂肪酸が作られます。一方、非発酵性食物繊維は腸内細菌のエサにはならず、便のカサを増したり腸のぜん動運動を促したりして便秘改善などに役立ちます。

② ビフィズス菌と一緒に摂る
腸内細菌は食物繊維をエサに、身体に良い代謝物・短鎖脂肪酸を産生します。これには複数種の腸内細菌がリレーをするように関わっており、それぞれの菌が食物繊維の形を少しずつ変えながら、リレーのバトンのように次の菌へ、そのまた次の菌へと手渡し、最終的に短鎖脂肪酸を作り出しています。菌のリレーで重要な働きをしているのがビフィズス菌などの有用菌です。
ビフィズス菌はリレーの第2走者で、食物繊維から糖の形になったものをエサにして酢酸(短鎖脂肪酸)を作ります。さらにその酢酸をエサに、次の走者である酪酸菌が酪酸(短鎖脂肪酸)を作ります。
ダイエットや美肌のために既に食物繊維を摂っている、と言う方もいらっしゃるかもしれませんが、食物繊維だけの働きは実は部分的にすぎず、ビフィズス菌が短鎖脂肪酸を作ってこその効果であることを覚えておきましょう。ビフィズス菌の不在は、リレーの中断にもつながりかねません。
“短鎖脂肪酸”を作り出す!大腸内の菌のリレー
第1走者:腸内にいる糖化菌が 食物繊維などをエサにして『糖』を作る
第2走者:ビフィズス菌などが『糖』をエサにして乳酸や『酢酸』を作る
第3走者:酪酸菌が『酢酸』をエサにして酪酸を作る

大腸内に第3走者の酪酸菌がたくさんいても、第2走者となるビフィズス菌などが少ないと、菌のリレーが中断している可能性あり。
ビフィズス菌がいないと
摂った食物繊維が太る原因に!?
また、ビフィズス菌などの第2走者がいなければ糖がエサとして利用されず、短鎖脂肪酸が作られないばかりか、腸内に糖が蓄積し吸収されて、かえって太りやすくなる可能性もあります。食物繊維を有効に働かせるためのカギになるのが腸内のビフィズス菌を減らさないことですが、加齢とともに減少する傾向があるので、サプリメントやビフィズス菌入りヨーグルトから常に補い続けることが非常に大切です。ヨーグルトを選ぶ際は、ビフィズス菌入りかどうかを意識して確認しましょう。

監修:國澤 純先生
(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所 副所長 ヘルス・メディカル微生物研究センター センター長(併))
プロフィール:1996年、大阪大学薬学部卒業。2001年、薬学博士(大阪大学)。米国カリフォルニア大学バークレー校への留学後、2004年、東京大学医科学研究所助手。同研究所助教、講師、准教授を経て、2013年より現所属プロジェクトリーダー。 2019年より現所属センター長。2024年から副所長。その他、東京大学の客員教授や大阪大学の招へい教授などを兼任。著書:『9000人を調べて分かった腸のすごい世界強い体と菌をめぐる知的冒険』等
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